第1章 水泳部と少女
その音はもちろんプールがある方角から聞こえてきて…。
え、まさかまだ泳いでるの?
もう結構暗くなりかけているし、肌寒い。
こんな中で泳げば確実に風邪を引いてしまうだろう。
少し早足になりながらプールへと向かって行く。
「……あっ…」
フェンス越しにプールの水面が揺れたと思えば、そこからすらりと伸びる腕。
水をかき、パシャっと水を足で優しく弾き進む一つの人影。
スイスイとまるで水を味方に泳いで行く姿に目を奪われ、無意識にフェンスを掴んだ。
ヒヤリとしたフェンスの感覚に我に返る。
そのせいでがしゃっと音を立ててしまった。
「?」
微かな音に気がついたのか、水の中を泳いでいた影がざばっと水中から立ち上がる。
「…っ、!」
「……」
別に見つかって悪いことはないが何故かきゅっと心臓が締め付けられた。