第7章 呪胎戴天
───────
──────────────
自身の傍らで気を失い倒れかける少女を
宿儺は静かに片腕で抱きとめる。
「‥‥」
無言で見つめる瞳は、何処か懐かしいものを見るかのようで
前髪を少しだけ触り払えばサラサラと流れ
穏やかに眠るような表情をする月瑠の顔がよく見えた。
数十秒前
『アォォォーーーーーン』
特級呪霊と格闘し、片手も指も失った虎杖が最後の意地で自身の呪力を呪いにぶつけた時だった。
渾身の一撃は呪霊には届かずいとも簡単に止められる。今の虎杖程度の呪力操作では月瑠のようにはいかなかった。
「ひっひひひひひひ」
「‥っくそ」
"死ぬ"と確信した。
しかし、その時聞こえた伏黒の合図。
一瞬だけ笑みを浮かべ、虎杖は自分の意識を手放す。
「────ヒッ!?!」
先程まで取るに足らない相手だったのに雰囲気が変わったと特級呪霊は悟った。
身体に紋様が浮かび上がると同時に、呪力量も圧も比べ物にならなくなっていく。
「‥‥つくづく忌々しい小僧だ
‥この俺を完全に舐めてやがる」
静かに、けれどとてつもないプレッシャーを発している目の前の者に、特級呪霊は現状理解が追いつかず後退りするしかない。
「‥!‥まぁ少し待て。先約だ」
「!?」
呪霊の肩をポン、と叩き
両面宿儺は一瞬でその場を去る。
本来ならば即座に伏黒たちを殺しに行く所だが──────
まだ領域内に感じるこの呪力を、宿儺は知っていた。
ビクつくしかない呪霊だったが、好きなようにあしらわれることに憤りを覚えた。