第7章 呪胎戴天
木霊するように聞こえてきた遠吠え。
伏黒の式神である玉犬の声だ。
恐らく脱出した事を伝えるためであろう合図に、月瑠はふ、と口元を緩めた。
今の自分の周りに居るのは呪いだけ。
術式の反動。周囲への影響。それらを考え、使用するか否かを天秤にかけた。
まだ領域内に残っており、確実に特級と対峙している虎杖含め全員を助けるためには
今ここにいる呪霊を即座に一掃し彼の所へ向かわなければいけない。
流石に、呪力の塊を飛ばすだけの月瑠の戦い方では限界があるのだ。
宿儺に変わる気だ、と確か伏黒は言っていた。
"両面宿儺"という言葉に胸の奥がざわつく。
けれど今はそんな事よりも
早く、早く
「───────‥‥‥輪廻操術「ならん」」
「──────────────え」
術式を発動する直前
背後に感じる底のないような強大な呪力。
体が、動かない。
しかし
それは恐怖心ではなく
「‥お前が術式を使う必要はない」
そう言うと、トン、という音と共に月瑠は自身の意識が遠のいていく事を感じた。
掠れる意識の中で見たのは身体に紋様が刻まれた虎杖───────ではなく、両面宿儺の姿。
「‥‥‥‥──────っ」
何かを言おうとしたのに、言葉が、声が出ない。
貴方は───────、