第1章 開幕
一瞬だけ自身の呪力を出して少女を誘う
けれど、それでも動かずただじっと五条悟を見つめている
闘争心は無いようだった
「まあいいや、これ着替えて。僕は後ろ向いてるから」
少し口角を上げ、五条は用意した服を渡す
彼女もコクリと頷き、彼の手から受け取って着替えはじめた
布ズレする音が、1分ほど洞窟に反響した
音を吸収するものが何もないので、着替える音だけが響く
「着替えた」
「!うんうん、なかなかに似合うじゃん」
シンプルなオフショルダーリボンのワンピース
きゅっと絞られたウエストとすっきりした開衿、程よく動きやすい軽い生地。少し見える鎖骨は彼女の白い肌を際立たせた
「‥ありがとう」
「!、いいえ、どういたしましてお嬢さん」
『ありがとう』という言葉を言われて当然の事を確かにしたのだが
素直にお礼を言われるとは思っておらず、少し驚いた
「さて‥‥ここからが本題だ。先ず、君の名前を聞いても?」
先程までとは打って変わって、真剣な雰囲気になる
それはそうだ
ここからは、彼女を祓うのか、それとも別の────
1つひとつの質問の答えが大切になってくる
今回依頼された内容は、発生した呪力の調査
そしてその対応
現場の事は五条にまかされていた
と言っても、彼は昔から自由主義で上の連中を困らせる天才なのだが
「──────月瑠」
少女の口から小さく発せられた名前
今にも消えそうで、儚く美しい彼女に相応しい名に思えた
「…月瑠、か」