第1章 開幕
「僕の名前は五条悟。呪術師。今しがた君が受けていた封印を解いてみたところだ‥‥っと、その前に少しだけここで待っていてくれる?先ずは君の服を持ってくるから」
「……わかった」
そう言って抱いていた少女を降ろし、自分が着ていた上着を掛ける
そして無下限呪術でその場を一時去った
‥少女は先程まで五条が居た所を少し見つめ、また顔を伏せた
───────
取り敢えず五条は自身の名前は伝えたが、あのまま話を進める事はできないのは当然の事
まずは麓の村で少女の服を持ってきてから。
先程まで彼女から発生していた呪力はかなり収まっている
"彼女から"という表現が正しいのか"彼女にかけられた封印から"が正しいのかは議論が必要だろう
それよりも、"ここで待っていて"などと言って大人しく待っているかという問題がある
少女が一瞬だけ、『呪術師』という言葉に対し僅かに示した反応を五条は見逃さなかった
まあ、万が一あの場から逃げた所で如何ということもないのだが
が、しかし
そんな考えは杞憂に終わることとなる
彼女は、短時間とはいえその場を離れた五条の上着を羽織り大人しく待っていた
「…逃げなかったんだ?……君、祓われたいの?」
「……行くところなんて、逃げるべきところなんて知らない。ここが何処かも、何故自分がここにいるのかも、分からない
………それに私は"殺せない"」
「…へえ?君、記憶が一部飛んでるみたいだね。けど"自分を殺せない"って事は分かると?それは随分と…。けど僕、『最強』だよ」
「…」
少し挑発するように五条は問いかけるも、少女は気にも止めないようで
ブラフの可能性もあるのに、彼女の言葉には何故か真実味を感じるものがあった