第6章 /休日/徊詮/
「月瑠」
「〜〜…っ」
最後のひと押しのごとく、呼んでみてといわんばかりに名前を呼ばれる。
低音で甘い五条の声。
月瑠の反応を見て楽しんでいるのか、喜んでいるのか、はたまた両方か。策士すぎると匙を投げたくなる。
こんな雰囲気だから呼びづらいのだと
月瑠は自分の考えを無理やりまとめた。
「───…さ、とる」
「……………」
「…?」
「…っはぁーーー」
ここにきて謎の沈黙。かと思えば五条は急にそっぽを向いて大きなため息をした。言われた様に彼の名前を呼んだのにこの反応はなんなのかと月瑠は怒りそうになる。
「…月瑠…悠仁にもそんな言い方してないよね?はぁ…」
「言い方…?ってかちゃんと呼んだのにその反応は酷いと思う。ねぇ、聞いてる?」
「まって。今こっち見んな」
五条の顔色を伺おうと月瑠が寄ろうとするが、彼の大きな手で遮られる。
いつもは軽い口調なのに、〝昔〟の素が出たような言い方になってしまっている。
(こいつ……あれは反則だろ……)
予想外だったのは五条の方だ。本気ではあったが、軽い気持ちも含んでの要求だった。
五条は月瑠よりも身長が高い。
当然、彼と話す時月瑠は顔を上げ上目遣いのようになるのだ。加え、先程の照れながらの言い方。
無意識にしているからこそ余計たちが悪く、五条は柄にもなく意識してしまった。