第6章 /休日/徊詮/
月瑠の術式の詳しい性能も、リスクの内容だってまだ知らない筈なのに。
五条は確かに最強だが、内容も分からないものをリスク承知でここまで気にかける人間だったか。
「……馬鹿はどっちよ」
「仮に月瑠の術式によるリスクが他人に影響を及ぼすものだったり暴走した場合
君の呪力からして、どの道止められるのは僕だけでしょ」
五条の自信に、意志が引っ張られそうになる。
"頼るくらいしてみろ"なんて言われると思わなかった。
月瑠は自分に対する自尊心が低い。自分という存在を、自分で過小評価し
最悪自分が傷付けば良いと思っている節がある。
五条はそんな人間を他にも知っていたし
月瑠がそうであることを感化しなかった。
「でも、私、五条に何も返せない」
頼る事は簡単だ。けれど、貰うばかりは月瑠だって嫌だった。
かと言って、自分の術式の練習をすれば対価が発生する。それだけは、"あの対価"だけは
彼に知られたくなかった。
「返す返さないじゃないよ。どの道、術式使うための呪力コントロール練習はしてもらうつもりだった。それにそういうの気にされる方が嫌って言ったでしょ」
「………でも、私だって嫌」
「…………」
月瑠も五条と同じくらい頑固な節があった。貰うばかりは絶対にお断りだと言い切ってしまうのだ。