第6章 /休日/徊詮/
右を見ても左を見ても
多くの人や彩りある店に囲まれて思わず立ち尽くしてしまいそうになる。
先日渡された観光bookを見ても感じたのだが
月瑠からすれば今居る秋葉原は
渋谷や新宿よりも"異世界感"といったファンタジー要素を強く感じるものがあった。
駅前の独特な雰囲気、アニメ文化はもちろんだが
視界に入ってくる情報がとにかく多いのだ。
あっちを見てこっちを見て、月瑠は見るだけで忙しかった。
「人多いし、僕からあまり離れないでね」
「うん、…っ」
「!…なになに、凄い積極的じゃん」
人に押され、自分の前を歩く五条の服の裾を少しだけ握る。
長身で分かりやすい見た目だし連絡手段もある為心配の必要性は低いが
知らない所での置き去りはどんな人間でも嫌だ。
「手、繋いであげようか?」
「い、らない!」
ふざけた調子で言わたれたと感じ、また子供扱いして馬鹿にされてると月瑠は憤怒した。ナチュラルに恥ずかしい提案をしてくる五条の心情が月瑠には分からない
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大通りに出て歩いている時
甘い匂いが鼻を掠め、月瑠は立ち止まる。
目についたのは大通りに面する程の有名なクレープ店。美味しそうにデザインされた、店に貼られている写真が食欲を誘う。
「クレープ気になるの?」
「…気になる…!」
「はは、いいね。じゃあ僕がおすすめのやつを注文してあげよう」
五条がテイクアウトで注文し持ってきてくれたのは、クリームとティラミスにマカロン、チョコスプレーまで振ってマシマシにしたもの。そんな夢のようなクレープを包みを破り一口頬張る。
「…!おいしい…!」
「月瑠って甘いの好きだよね」
「五条がたくさん食べさせてくれたから、好み移ったかも」
「確かに」
五条悟はかなりの甘党だ。月瑠も特段にそうだった訳ではないのだが、五条に勧められるのは甘いものが7割な上、一緒に居る確率も高いため好みが移るのも無理はない。