第5章 鉄骨娘
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「だから言ったろ!!1人は危ねー真面目にやれって!!」
「1人は危ないなんて言われてないわよ!!」
「言っ…てなかったっけ!?」
ぎゃあぎゃあと騒がしく言い争う虎杖と釘﨑。
あの時、釘﨑"だけ"が生き残っても、子供"だけ"が生き残っても明るい未来はなかった。
呪霊は祓ったのだから落ち着いてもいいのだが2人はそうはかいかず
子供も月瑠も苦笑するしかない。
「…!君、怪我してる」
「あ…これはさっき…」
2人が言い合いをしている隣で、月瑠は虎杖に預けられたままの少年の怪我に目が行った。深くはないが、爪で切られた首元は痛そうに出血している。
「……よく、頑張ったね。…目を閉じて、
…ほら、治った」
「…!お姉ちゃん凄い…!魔法使いみたい」
「魔法使い…?ふふ、そうかもね」
首元に優しく触れ、反転術式で傷を癒やす。重症ではない為すぐに治せたが、子供からすれば驚きでしかなかった。キラキラとした笑顔を向けられ和んでしまう。
「………子供は美人に懐かない筈…納得いかないわ…」
「何言ってんだお前…てかさ、俺もしこたま聞かれたんだけどさ。なんで釘﨑は呪術高専来たんだよ」
「はぁ…?そんなの…
"田舎が嫌で!東京に住みたかったから!!" 」
「!?」
お金のことを気にせずに上京するには、この方法しかなかった。
虎杖の質問に対する堂々たる釘﨑の答えに、彼は雷に撃たれたような大きな衝撃を受けた。人の命を救いたいとか、自分の目標だとか、もっと別の事を想像していた。
「…その理由で、野薔薇は命をかけられるの?」
「懸けられるわ。私が私である為だもの。」
即答だった。
命を懸ける理由は人様々である。それが重いから偉いわけでも、軽いから酷い訳でもない。結果が常に物語るし、何より釘﨑の言った"自分が自分であるため"という言葉は月瑠にとっても腑に落ちた。