第4章 初志貫徹
「…何しに、ですか?」
唐突な質問。これは虎杖悠仁に対しても聞いた事だが、月瑠にも同様に問いかけられる。
「そうだ。ここは呪いを学びを呪いを祓う術を身につける場だ。その先に、君は何を求める。」
「………」
"その先"
その言葉を聞き、月瑠は少し顔を伏せ沈黙する。
ふと、五条に言われた言葉を思い出した。
『──────月瑠は、これからどうしたい?』
「私、は……自分の呪いを解いて、本当の"死"が欲しい。
ずっと続く輪廻を終わらせたい。…五条に封印から助けられた時、それだけを思っていた。それがないのなら、ずっとあの場に居たほうが方がマシだと。
勿論、呪いを解きたい気持ちに変わりはない。
此処に来れば、解けると思ったから来たのも事実。
───────けど
その過程で、その結果で。私は"私自身"として納得できる"最期"を迎えられるように。記憶を思い出して、呪いだって解いて、誰かを助けて。
…生きる意味を見つけられるかもしれない。だから此処に来た。」
「生きる意味…か……曖昧だ。呪術師に悔いのない死などないぞ。
自分の死だけでなく呪いに殺された人を横目に呪いの肉を裂かねばならんこともある。
…"あの時こうすれば"なんて思った時にはすでに遅い」
「……確かに曖昧かもしれない。
けれど"あの時"なんて、私にはもうとっくに過ぎた。長い年月を過ごし、知らない事、知らないものばかり。
…これは私が自分で決めた事。この決断に後悔なんてしない。」
「………」
「………」
月瑠の言葉を、夜餓と五条は静かに聞いていた。
最初、五条が月瑠にこれからの事を聞いた時
彼女は今にも死にたいと思っているような暗く悲しい表情をしていた。
けれど今は『死』という最後を見ているだけの少女ではない。
結果、"月瑠自らが死を望めば自分が殺す"
そう誓ったことに偽りはない。
だが、彼女が言った言葉に自然と口角が上がった。
五条にとって月瑠の決意は嬉しく感じるものだったのだ。