第3章 開/終/
それ以上の事を、月瑠は語らなかった。
六道輪廻。この世に生を受け死があるものは、六道の世界に生と死を何度も繰り返すこと。
天道、人間道、修羅道の『三善趣』
畜生道、餓鬼道、地獄道の『三悪趣』
その操術など想像もつかないのだが、五条も深く追求はしなかった。
術式の開示という点もあるのだが、月瑠本人が辛そうで苦しそうで。
五条は転生だとか、そういう事を信じてはいない。
だが仮にそういう事があったとして。繰り返す生と死の体験など、考えても答えなど分かるはずなど無いのだ。
「…嫌な話をさせたみたいで、悪かった」
「…?私が勝手に話したことでしょ…?」
「……」
少し、変な空気が流れた。割と、だいぶ割と唯我独尊な五条が謝罪など滅多な事ではない。だが、五条悟にだってバツが悪い時も、目の前で悲しそうにする少女をこれ以上見たくないと
無意識に感じることだってあるのだ。
「五条‥‥‥?」
月瑠も、今の五条の雰囲気にはとても不安になった。
目を隠し顔の表情全ては見えない彼が、どういう気持ちなのか。
「‥‥さて、!月瑠の事も少しは知れたし、子供はとっくに寝る時間だ。さっさとおやすみ」
「だから私は貴方よりも年上‥‥っていうか、寝れないんだってば‥」
「じゃあ、月瑠が寝るまで優しい五条先生が一緒に居てあげよう」
「‥っ!?余計気が散る‥!」
「心配しなくても最強クールガイな僕は子供に手を出したりしないから」
「な‥っ」
「いいから、今日は寝るまで俺が側に居るから、安心して寝ろよ」
「………」
有無を言わさぬ五条の言葉に反論する熱を無理矢理抑えられ、仕方なく月瑠は引き下がった。