第3章 開/終/
「恵から報告を受けた。半分が呪いみたいなもんだから想定通りだったけど、他人にまで反転術式が使えるんだね。しかも、呪力の譲渡ができる、と」
「ん…まあ…。」
「これから僕が聞く事、答えたくなければ伏せて構わない。
"呪力の譲渡"。それが、月瑠の術式?」
月瑠の場合、虎杖や乙骨の場合と違って情報が少なすぎる。
"もしも"の時の為にも、彼女については知っておく必要があった。
ただ、術師にとって…まぁ、月瑠はこれから術師にするのだが
術式の開示はリスクを伴う。
本人が伏せる事は五条も追求するつもりが無い体で聞いた。
それは何かあっても、五条悟が対応できるという点も踏まえての事だ。
「……少し違う。譲渡は反転術式と同じ、ただの呪力操作。根本はもっと先にある。
…………ねえ、五条は、『輪廻』を信じる?」
「"輪廻"…?転生だとかそういうの?悪いけど、そういう事は興味ないな」
「そう。そっか。まあそうだよね」
「…?」
月瑠が一瞬見せた暗い顔。それは五条が興味ないと言ったからではない。その話自体が辛そうだった。
結論の見えない話で五条は疑問に思う。しかし、彼女が言う言葉を聞いておかなければいけない気がして、黙って見つめる。
「この世はね、全部廻(めぐ)ってるの。水も、空気も、魂も、想いも、呪いも。
廻って、廻って廻って。ずっとそれの繰り返し。
でも、本来なら自分の廻りなんて分からない。記憶も、そのものとしての感情も無い。何故なら廻る度に、"それ自身"ではなくなっているから。機能は同じでも、"それ"とは違う。
私は、無限に続く『輪廻』を。『生と死』を
"私自身"で繰り返す。
記憶も、痛みも、感情も。それはずっと私の中にある。
‥‥‥それが私が生まれた時から持つ呪い。
決められた運命。
私の術式は、輪廻に存在する六つの世界を操る操術。『六道輪廻』
…伏黒に呪力を譲渡できたのは、一種の廻を利用操作しただけだよ」