第2章 開/序
流石に特級呪物を身体に取り込んだというのは五条にとっても予想外だった。にわかには信じがたい。
それを確認するべく虎杖に顔を近付ける。虎杖も急に顔を近付けられ、戸惑い後退る。
「……本当だ、混じってるよ。ウケる」
現実的に考えれば、一切、微塵も笑えないのだが
五条にとってはそれも好奇の対象になるのだ。
「体の具合は?」
「特に…」
「今、宿儺と代われる?」
「えっ、できる…と思うけど、良いの?」
虎杖の調子を確認しながら、五条は準備運動のような動きをする。
いきなり呪物と代われるかなどと聞かれ、虎杖は大丈夫なのかと不思議に思った。
「大丈夫。僕『最強』だから」
余裕な表情を見せ、五条は持っていた喜久水庵の袋を伏黒に渡す。
伏黒は、本当に観光して来やがったのかと絶句した。
五条が伏黒に喜久水庵の事を話ている内、虎杖の体には先程と同じ様な紋様が現れ一瞬で高く飛び、五条の背後に回る。
「生徒の前なんでね。カッコつけさせてもらうよ」
ドン!!!!と大きな音と土煙が舞い、視界が悪くなる。
宿儺の拳は五条が立っていた位置にクリーンヒットし、殺ったとばかりに笑う。‥‥がしかし、自身を最強と豪語するだけあって、宿儺の拳は五条に届いていなかった。
それどころか、椅子のように体の上に乗られ、あまつさえまだ呑気に話を続けている。
左手を大きく振りかざし、体を無理矢理に起こした。
(おそろしく速い?…いや違うな)
もう一度攻撃を仕掛けるが、やはり五条には当たらない。
消して宿儺の動きが遅いわけでも攻撃が小さいわけでもない。その場にいる伏黒は感じているが、側に居るだけで感じる衝撃と速さだ。
『まったく、いつの時代も厄介なものだな。呪術師は。
…だからどうという事もないのだが』
久しく味わっていなかった戦闘の快感を徐々に思い出し、狂気的な笑顔で体の力を込めもう一度攻撃を仕掛けようとした時だった。
その場の全員が一斉に感じた気配に、宿儺の動きが止まった。