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【呪術廻戦】/無題/

第2章 開/序


✦✦#seen


─────── 一瞬。 





本当に一瞬だった。





伏黒恵には、今目の前で起こっている現状を理解できずにいた。
否、本当は分かっている。今起こっているのが『最悪』の状況だと言うことは。
今でも倒れ伏せ横になりたい体を無理矢理にでも叩き起こし、目を見開いて現実を凝視する。

先程まで、非呪術師でありながら自らの体を気にもとめず共に戦かおうとしてくれた男、虎杖悠仁。
しかしながら…現実は残酷だ。呪いは呪いでしか祓えない。運動能力がいくら高かろうが、戦闘意思があろうが、呪力のない虎杖では『逃げる』という選択肢しか残ってないはずだった。

にも関わらず
虎杖は逃げるどころか伏黒を助けようとする。
ぼろぼろになりながら。
伏黒も術式が解けてしまい、もうだめかと思っていた。


「‥なんだ、あるじゃん全員助かる方法。
俺にジュリョクがあれば良いんだろ」
「なっ、馬鹿!!やめろ!!!!」

呪力が何かも分かっていないのに、虎杖はゴクン、と喉音を鳴らし両面宿儺の指を飲み込んだのだ。 
あれは特級呪物。"普通"なら確実に死に至る猛毒だ。
だが、万が一、万が一 ───






伏黒がその『万が一』を考えた瞬間、虎杖の体に表れた紋様。
コンマ0.1程の速さで、先程まで苦戦していた呪霊を瞬殺し
ゲラゲラと笑う虎杖。

いや……虎杖ではない。

本当に最悪な万が一。
特級呪物が受肉したのだ。
『ああやはり!!光は生で感じるに限るな!!…良い時代になったのだな。女も子供も、蛆のように湧いている。

       素晴らしい
       鏖殺だ。』


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