第2章 開/序
───────
「さて、とっ。そろそろ可愛い生徒の所へ行ってあげようかな」
日も沈み、辺りは暗く街灯が点灯した頃。ようやく本来の予定をこなそうと五条は動き出す。
いや、正直行動が呑気で遅すぎるのだが、月瑠も堪能させて貰ったぶん何も文句は言えなかった。
二人が到着したのは、ただの学校‥‥とは言い辛い、ひどく嫌な気を発している夜の校舎だった。
「…なにここ」
「おーーいるねー。っというかこれ、もしかして回収失敗してない?」
窓ガラスが一部割れているし、封印が弱まっているだけという呪物にしては明らかに異様だった。
屋上の方では、土煙が舞っている。どうやらそこで戦っているようだ。
「取り敢えず行ってくるから、君はここで待ってて」
「…!でも…っ……、
…わかった…」
「じゃあね」
月瑠を校門前に置いて、五条はさっさと校内へ入っていった。
確かに、ここから先は着いていった所で月瑠にできることは何もない。その上、既に術師が戦っているのならば半分が呪いの自分などが行けば余計現場を混乱させるだろう。
だから月瑠も仕方がない事だと納得し五条を見送った。
大人しく待っているつもりだった。
なのに。
一瞬で感じた、先程までとは違う大きな呪力。
呪術師が戦っていたであろう呪霊の存在は即座にかき消され、新たな物が発生したと肌で認知した。
それだけなら良いのだが
この呪力は──────
五条悟には待っていろと指示されていた為少し躊躇したが、月瑠は手を握りしめて校舎内へ入っていった。