第2章 開/序
一方的に話し、一方的に通話を切った五條悟はスマホをポケットに入れて手を組み伸びをする。
「あのまま放っといて、いいの、?」
「んー、まぁ。担当が恵だから大丈夫だと思うけど、特級である以上、上が五月蝿いだろうなーどうするかなー」
通話相手の男の子の焦りを感じた月瑠が五条に問いかけるも、当の本人は本当に悩んでいるのか分からない程度の態度しか見せない。
勿論そこには、五条悟が伏黒恵を信頼している、という点もあるのだが。
しかしながら今回の対象は特級。中でもあの"宿儺の指"だと聞いた。
臆病な呪術世界の老人たちはうるさく叱責してくるだろう。
「仕方ない、可愛い生徒の為に行ってやりますか。って事で月瑠、寄り道がてら観光行こっか」
「えっ、…観光…?」
何がどうなって五条が"観光"という発想に思い至ったか月瑠には理解できなかったが、今は彼に着いていくしかなく新幹線に乗って仙台にまで移動した。
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「しんかんせん、凄かった…」
「そう?」
あれ程までに速いものに初めて乗った月瑠は、バクバクする胸を手で抑えながら言った。
本当に景色が一瞬で、目移りする暇もない。周りの乗客が二人を見つめていた視線は気になったが…確かに白髪の男女で、片方は目を隠した長身男性なのだから仕方がない。
「でも、五条なら洞窟の時みたいに一瞬で移動できるんじゃないの?」
「あぁ、あれって一定の条件下じゃないと出来ないんだよね。それに、新幹線移動も別に悪くなかっただろ?」
「まあ……」
「それよりも、僕ちょっと行きたいとこあるんだよね」
軽やかな足並みで月瑠の前を歩く五条
今頃伏黒は宿儺の指探しに難儀しているだろうに、本当に観光するつもりなのか…と感じながら、離れないように月瑠も着いていった