第1章 開幕
これから、なんて
月瑠は呪いを広めたいだとか、そんな事は考えていない
自身を長い間封印してきた者にさえ、思考が寄らなかった
「わた、しは──────…」
沈黙……表情は一層暗くなり、額がさがっていく
上手く答えることができない
否。それには語弊がある
本当は、本当は決まっているのだ
本当は
…………………死にたい、と
これからを夢見る気持ちに偽りはない。そうであってほしいと願う。
記憶が抜けている彼女は、自身の名前と能力
死ぬ事ができ無いということしか知らない
けれども、心が覚えている。何に対するかも分からない恐怖心を
それが月瑠を死へ縛り付けた
「わたし、は…「…一緒に来る?」」
「!?」
月瑠の言葉を遮り、五条はまたしてもとんでもない事を口にした
流石に月瑠も驚いて伏せていた顔を上げる
「東京都立呪術高等専門学校。僕は今そこで教師をしながら呪術師として活動している。僕と一緒にそこへ行こう」
「何を言って…っせめて、せめて私はずっと此処にいた方が」
「───けど、1人は寂しいよ?」
「…」
「君の力と呪いは確かに危険だが、使い方次第で人を助けることもできる。君に憑いている呪いも祓える可能性が高い。決めるのは、そこからだ。
……それでも迷うなら、月瑠が、自身で考え、"心から"望んだ時
俺が、君を殺そう」