第1章 開幕
「じゃあ、最後の質問だ。
………君は、これからどうしたい?」
「え……?」
最後にしては、あまりにも突拍子で簡潔な質問
月瑠はてっきり『死なないのなら試しに祓ってみよう』だとか月瑠の持つ『能力』について事細かく聞かれるのかと思っていた
それをこの目の前に立つ白髪の男は『これからどうするか』などと未来の話をする
「私に、"これから"が、あるの…?」
「ああ、ある。先がどうかは分からない。けれども、少なくとも"今"ここで殺さない。殺させない──────月瑠は、これからどうしたい?」
考えるような間もなく、五条悟は断言した。
"今"と言ったのは、ここからは月瑠の解答次第だから。今から人を鏖殺するだとか呪いを広めるだとか、そんな事ならば五条にとって致し方のない結果となる
六眼をもってしても解析できない彼女の力
呪いと人が混じった存在
それとは別に、憑かれている呪い
封印されていたという事実
封印解除後、彼女の目にうっすらと観えた華のような紋様もきがかりだ
謎は増す一方。呪術規定に基づけば、真っ先に祓うべき対象だ。
加え、月瑠自身が『祓っても死なない』と言っているのにも関わらず五条は『殺さない』という言葉を使った
互いの矛盾を無理やり崩すのは、何度も言う"五条悟が『最強』だから"という理由に起因する
力が分からない以上まだ確かな理由にまでは至らないが、それでも十分すぎる理由となった