第1章 開幕
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彼が発したその言葉によって、私は頭を撃たれたような衝撃を受けた。
嗚呼、昔の事だ。今はもう遥か昔の事。
──────あの人にも──
『これは"誓約"──────。
いつか必───、俺───が、お前、を─────』
そう言って、ぼろぼろになった私を"あの場"から救ってくれたのは誰だったか
汚れた身体も、嗚咽も、気に留めず
ただ自らが望むがまま、行うがままに。そばに置いてくれたのは誰だったか
『──変わり────ある───────だ…───』
思い出そうにも、脳内にノイズが走り思い出せない。
無理やりやろうにも頭痛が酷くなるだけだ。
何故、記憶が無いのかも分からない。
"心から"望めば殺してくれると今目の前にいる彼は言った。そんな、匙加減が分かる筈もない要求を、こんなにも…受け入れてしまいそうになるのは一体、。
傷を受けても、呪術師による祓いで幾度とない術式を受けようとも、私の身体は受け入れない。
治そうとせずとも呪力を使わず自然に治癒される。
首を刎ねようが、燃やそうが、焼こうが煮ろうが同じだ。
私の呪は──────/輪廻/
理を変える力。自らが理を生み出す力。
この世に生まれたときから持っていた、忌まわしいもの。
自身を『最強』だというこの男性…五条は躊躇なく手を差し伸べる。
言うだけあって、彼の呪力は底が分からない。
凄く、眩しい人だと思った。着いていけば、何かが大きく動くと直感する程に。千にひとつ、いや万に一つ、死ぬのではなく、生きる為にできることがあるのかもしれない、と。
私は顔を上げ彼の手を取った。