第8章 雨後※
「僕はさ、性格悪いんだよね」
「知ってます」
「伊地知、あとでマジビンタ」
「ま、マジビンタ…?」
自分で性格が悪いと言いつつ、伊地知に即座に肯定されることは許さない。理不尽極まりないのが五条悟だ。
「教師なんて柄じゃない。そんな僕が何で高専で教鞭をとっているか。 聞いて」
「な、なんでですか…?」
あくまでも伊地知の方が興味がある体を装って
半無理矢理に話を進めていく。
「夢があるんだ」
「夢…ですか?」
「そっ。月瑠達の件でも分かる通り、今の上層部は呪術界の魔窟だ。
僕はそんなクソ呪術界を、リセットする。
上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。
でもそれじゃ首がすげ変わるだけで変革は起こらない。そんなやり方じゃ誰もついてこないしね
だから僕は"教育"を選んだんだ。
強く聡い仲間を
育てることを」
かつて
今は遠い青いあの日。
唯一の友を止められず 殺めた。
自分だけが最強では駄目だと
自分が助けられるのは、他人に助けられる事を望む人間だけだと悟った。
「そんなわけで、自分の任務を生徒に投げることもある。愛のムチ」
(それはサボりたいだけでは…)
現在の呪術高専の生徒は皆優秀だ。
特に3年の秤や2年の乙骨は五条に並ぶ呪術師になると確信していた。
もちろん、虎杖悠仁も月瑠もその一人だ。
だからこそ、この結果が許せない。
血管が浮き出るほど、五条は拳を固く握りしめる。
「ちょっと君たち。もう始めるけど」
「!」
「そこで見ていくつもりか?」
話をする男2人を他所に、家入は手袋をはめ黙々と虎杖悠仁を解剖する準備をしていた。宿儺の器という存在を、体の構造から隅々まで理解するためだ。
「役立てろよ」
「役立てるよ。誰にもの言ってんの」
鋭いメスを持ち、空いた胸へ刃をすすめる
「─────────────待って」
「!!!」