第8章 雨後※
五条のそれは
圧倒的なまでの、紛れもない殺意。
本当に今すぐにでも上層部を皆殺しにしてしまいそうで。伊地知が死期を悟るほど萎縮するには十分過ぎる圧だ。
それ程までに、それ程までに五条悟の怒りは抑えきれないくらい膨れ上がっていた。
殺された虎杖を見てどう思ったか。
たとえ生きているにしても、意識の無い彼女を見てどう感じたか。
そんな事、語る必要も無いだろう。
「珍しく感情的だな。」
「!」
カツカツとヒールの音を響かせ
自動ドアを開き2人が待っていた家入硝子が入ってくる。目の下には隈をつくり顔色はあまり良くない彼女だが、五条と同期且つ、治療における実力は確かな女性だ。
「随分とお気に入りだったんだな、彼。
‥それに、隣の部屋のあの子の事も」
「僕はいつだって生徒思いのナイスガイさ」
「生徒、ね。それにしてはえらく入れ込んでると思うがな。‥特に、あの特級少女に。
‥‥まぁ、そんな事はどうでもいい
あまり伊地知を虐めるな。私達と上との間で苦労してるんだ。
あの彼女の事は伊地知が上に"重体"と報告したからこそ、まだマシな結果になったとも言えなくもない」
(‥!もっと言って‥!)
五条に殺される直前に、いや、実際にはそんな事は無かったのだが
伊地知からすれば死亡間際に現れた家入硝子という救世主。加えて自身の身を案じフォローまで入れてくれる彼女に心がキュンとする。
「男の苦労なんて興味ねーっつーの」
「そうか」
‥‥‥が
そんな気分はほんの一瞬で、喜んだ気持ちはコンマ数秒で叩き壊された。
(もっと言って‥!!)
本当に毎度苦労の耐えない伊地知からすれば切なる願いなのだが、そんな事は五条と家入という2人には受け入れる以前の問題だった。