第8章 雨後※
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呪術高専所属の医師であり
反転術式による傷の治療ができる数少ない人間の1人である家入硝子を待つ間
伊地知と五条の間には重い空気が流れる。
月瑠は、現状意識は無いが生きていた。
彼女自身が死ぬ事はありえない。そこは置いておき、心臓も動き呼吸もしていた。
しかしながら
良かったと言えるのはそこだけだ。
否、寧ろそこを省いたとしても結果としては最悪と言わざるを得ないだろう。
重体という事に変わりはなく
1年生4人の内の1人、虎杖悠仁は既に死亡しているのだから。
(家入さん‥早く来てください‥っ)
椅子に座る五条を横目に、伊地知は上昇した心拍数を抑える間もなく冷や汗をかいた。
「わざとでしょ」
「!‥‥と、仰いますと」
静かな空間の中、最初に言葉を発したのは五条だ
何かを言われる心構えはしていたつもりだが、
伊地知は反射的にビクつく。
「‥特級相手、しかも生死不明の5人救助に
一年生派遣はありえない。
僕が無理を通して悠仁と月瑠の死刑に実質無期限の猶予を与えた。
面白くない上が僕のいぬ間に特急を利用して
体良く二人を始末ってことだろう」
「い、いえ‥それは」
言葉を続ける五条の空気が次第に重くなっていくのを肌で感じる。
酸素を肺に取り入れるのさえ、忘れてしまいそうになるくらい冷たく、恐ろしく。
「他の2人が死んでも僕に嫌がらせができて一石二鳥とか思ってたんじゃない?
その上、月瑠は最低でも僕じゃないと殺せない。かと言って今の僕は彼女を殺すことはありえない。
‥‥‥特級の相手で奇跡的に死んだ事にでもして、後は楽しく上層部が実験のおもちゃにでもするつもりだった??」
「っ、、いや しかし、派遣が決まった時点では
本当に特級に成るとは‥‥」
「犯人探しも面倒だ。
上の連中
───────全員殺してしまおうか?」
「、!!!?」