第8章 雨後※
「‥‥‥‥」
部屋に入り五条の視界に入ったのは、
病室のような質素で空虚な空間の中
1つだけ置かれたベッドの上に寝かされている月瑠の姿。
瞼は固く閉ざされ、規則的に、静かに呼吸をしていた。
そっと頬に触れればその体温を感じ、生きているという事は分かる。が、意識はない。
「これといった外傷はないのですが、高専の方に連れて来られてから目を覚ます様子は無く‥。
一応、要監視対象で上からの目もある為、寮ではなく地下のこの部屋に運びました」
外傷は無いが、意識は戻らない。
つまり、彼女自身の内部に問題が発生しているのか‥?半分が人間ではない存在の為下手に扱う事が難しく、伊地知は報告を"意識不明の重体"という体にしておくことにしたのだ。
結果として、この報告は上層部への対応としては正解となった。"重体"だからこそ、高専は家入監視の元治療と称して月瑠を匿うことが出来た。
任務終了時は五条が不在だった為、月瑠はそのまま良いように処理されていた可能性があったのだ。
だがそれは、"上層部への対応としては"ということだが。
「はぁー‥‥伊地知、何で僕にまで上と同じ報告内容を話したのかな。紛らわしい」
「え‥っ、いえ、一応規則に乗っ取っただけで‥。その後ちゃんと話すつもりだったのですが、五条さんが全て聞く前に地下へ向かわれたので‥‥すいません‥」
自身が悪い訳ではないのに、ついつい癖で謝ってしまう伊地知。
取り敢えずは、生きているのならば、良い。
五条悟は大きく息を吐いた。