第7章 呪胎戴天
先の生得領域を抜けるために使える式神は一通り使い切り、玉犬白と大蛇は既に破壊された。
伏黒恵の呪力はとうの昔に限界を迎えている。
「お前の式神、影を媒体にしているのか」
「‥‥ならなんだ」
「呪符を使うありきたりなものでもなく、応用も効く‥。ふむ‥、分からんな。
お前あの時、何故逃げた?」
「‥‥?」
「‥宝の持ち腐れだな。
まぁ良い、どの道その程度では"心臓"は治さんぞ。
つまらん事に命をかけたな」
「‥‥」
(ならなんで!俺は助けたんだよ!!!)
数刻前
虎杖が自分に発した台詞が脳内に再生される。
(誰かを呪う暇があったら、大切な人の事を考えていたいの)
───────疑う余地のない善人。
自分の姉である津美紀は、誰よりも幸せになるべき人だった。それでも、現実は残酷で。結局彼女は呪われた。
因果応報は全自動ではない。"呪術師"はただの報いの歯車の1つ。
だからこそ
伏黒恵は
自身の意思で、少しでも多くの善人が平等を享受できるように。
"不平等"に、人を助けるのだ。
「───────!!!
‥いい、良いぞ
命を燃やすのはこれからだったわけだ!」
ビリビリと毛が逆立つような強い呪力。
伏黒にとっての"最期"の術式。最終的な切り札。
文字通り最後となる戦いに宿儺自身も歓喜した。
「魅せてみろ!!伏黒恵!!!!」
『‥‥‥布留部由良由良 八握───────」