第7章 呪胎戴天
───────それは
術式発動の為の台詞を全て言い終わる直前だった。
雨の音だけがその場に響き、後は何も起こらない。
「‥‥俺はオマエを助けた理由に論理的な思考を持ち合わせていない。
危険だとしてもオマエの様な善人が死ぬのを見たくなかった。それなりに迷いはしたが、結局は我儘な感情論。
‥‥‥‥でもそれで良いんだ
俺は正義の味方じゃない
"呪術師"なんだ」
だからお前を助けたことを一度だって後悔しない。
そう言うと伏黒は術式を使う為の印を解いた。
「‥‥そっか」
スウ、と、虎杖の身体から刻印が消えていく。
「伏黒は頭が良いからな。俺より色々考えてんだろ」
伏黒の言う真実を、虎杖悠仁は認めていた。
それは諦めでもなく、自身が間違っているとも思っていない。
けれど、特級と対峙する直前までの、どこまでも平行線だった二人の意見のぶつかり合いではなかった。
とても晴れやかな顔で、互いを認めるのだ。
「あー‥悪い‥。そろそろだわ、
伏黒も釘﨑も月瑠‥と、五条先生は心配要らねぇか」
ボタボタと
割いた胸から滴る紅が地面を濡らす。
「──────────────
長生きしろよ」
最期にそう言い残し
虎杖悠仁は地面に伏せた。