第2章 始めて掴まれて
「お前らー。早く食ってレッスンやるぞー」
声をかけてくれたのは二階堂さん。
二人の口喧嘩がぴたりと止まる。
ナイスフォローですありがとうございます。
私は残りの弁当を持って事務室に入る。
社員の私たちのお弁当は、社長さんのもお揃いで一番安い、のり弁当。
アイドル達に配った唐揚げ弁当も、若い男の子達には少なすぎる量だ。
きっと、まだ売り出したばかりのグループなんだろう。
それでも彼らは特に大きな不満も言わず、レッスンに励んでいる。
その努力が、ちゃんと報われたらいいなと思った。
事務室で海苔弁当をそれぞれに渡すと、大神さんから水筒を二本と七人ぶんの器を渡された。
「スープです。この寒い時期に頑張ってくれている彼らに、渡してあげて下さい」
温かい笑顔に見送られて、私はトンボ返り。
きっと喜ぶだろうな。
訓練場に戻ると、もう皆ほとんど食べ終わってしまっている。
少し遅かったかもしれない、走って来るべきだったかな。
「大神さんからスープの差し入れです!」
案の定喜んで受け取ってくれる彼らは、少年の顔をしていた。
かわいいな。
陸くんと環くんが、水筒と器を受け取ってくれて、逢坂さんと三月くんがスープを回してくれた。
届けた事にお礼を言われ、私は今度こそ事務室へ戻る。
社長さんも大神さんも、仕事の後で食べるつもりなのか、弁当を机の脇に置いて作業していた。
私一人だけ先にご飯頂いてしまうのも、なんだか気が引ける。
少し迷った末に、私も弁当を机に置き去りにして、後で食べる事にした。
ご飯は仕事が終わってからゆっくり食べよう。