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get back my life![アイナナ]

第2章 始めて掴まれて


 なにこれホラー現象とか言うのかな、やめてや怖すぎるんやけど!
 恐々としながらバケツを持ち直し、訓練場の中に入る。
 ドアが閉められると、長い腕が視界の端に映った。
 筋肉質で健康的な肌、袖は八分の辺りで捲られている。
 良かった、幽霊じゃないみたいで。
「はあ」
 思わず深いため息がこぼれながら、バケツを床に下ろす。
 隣からかけられた人の声に、だけど私はまたビクリと肩を跳ねさせて驚くことになる。
 二階堂さんだったからだ。
「単刀直入に聞くが、あんた何者なんだよ」
 疑いの目には、警戒心と嫌悪感も込められている。
 すごむような声音は、私を怯えさせるのに十分な迫力を持っていた。
 堂々と向けられる敵対心が怖い。
 二階堂さんの言った事は唐突過ぎて、何を責められているのかも分からない。
「私、は山中一華」
「名前は知ってる。それとも、しらばっくれてるのか?」
 睨み付けられて、無意識に足が一歩さがる。
 一体、何が聞きたいんだろう。
 二階堂さんが求めているのは、謝罪? それとも違う何か?
 私には分からない。
「これ、あんただろ?」
 二階堂さんは、ズボンの後ろポケットから携帯を取り出し、私に画面を見せた。
 映し出されているのは、短い動画。
 ざわざわと騒ぐ人の群れは、長閑な昼の公園の中。
 その中心が綺麗に、人の居ない空間になっている。
 誰かの携帯で手元から撮影されていて、映像は空に向けてズームされる。
 そこに、一人の人影。
 上空からゆっくりと降りてくる、仰向けの人物。
 羽が生えてる訳でもない、吊り下げられている訳でもない、それは一人でに降りてくる。
 なんだあの汚い女は、と撮影者と思われる者の声。
 確かに、空中の人物は、黒いシミだらけの小汚ない格好だが、体格から見て女性だと分かる。
 その服装は、私がよく知るものだった。
 ━━だって、あれは私の作業服。
 映像はそこで止められた。
「もう一度聞く。あんたは何者だ」
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