第2章 始めて掴まれて
事務所を出て、向かうのは近くのコンビニ。
六弥さんと二階堂さんと一緒に事務所へ来る途中にも、何件かあった。
適当な飲み物とサンドイッチを買う。
そのお金は、鳥居先生のものだ。
今朝、残されたメモに書かれていた事、生活費について。
お金は財布の中身から賢く使う事、とあった。
この世界に来た時、私は身一つだった。
作業服のポケットにうっかり貴重品を入れていた、なんて便利な展開も無く、一文無し。
そういえば、鳥居先生の事を意外と面倒見が良いって、三月くんも言ってたっけ。
コンビニを出て、目についた歩道橋に上がり、柵に寄りかかって街を眺める。
視界に映るのは縦長な長方形のビルとビルとビルと、真下に伸びる道路と並木だけ。
ゆったりと腰を落ち着けて食事ができそうな場所は、どこにも見当たらない。
仕方なくその場でサンドイッチを手に取り、一口。
美味しい、けれど、実に味気なく感じた。