第2章 始めて掴まれて
「私より、紡さんとか三月くんとか陸くんの方が、スカートは似合いますよ、変な話」
謙遜も含めて付け加えて言う。
アイドルなんて、私が一番なりたくない職業だ。
そういうのは、ぜひ他の人にお願いしたい。
紡さんは、誰が見ても可愛らしいと思う。
華やいでるとか派手とかでは決してないけれど、素朴な可愛さと愛嬌がある。
もし身内だったら、過保護になっちゃいそうなくらい猫可愛がりしてしまうんじゃないかな。
三月くんは、七人の中で一番背が低くて目も、くりっと大きい。
女装させたら、男の娘として栄えると思う。
というか、女装ちょっと見てみたい。
陸くんは心に裏表が無くて、仕草や表情に幼さがあった。
彼も女装をすれば、きっと向日葵のような愛らしさが出ると思う。
男の子にスカートを履かせるのは、きっとあまり褒められる事ではないだろうけど。
三人とも似合うんじゃないかな、お人形になった私なんかよりずっと。
わりと本心で言えば、大神さんは困ったように苦笑いする。
「そんな事、特に三月くんには聞かせられないと思いますよ、きっと三人とも似合うでしょうけど」
あ、否定はしないんだ。
この芸能事務所は私が想像してたよりも、前衛的なところなのかもしれない。
「大丈夫です。彼らには言いませんよ、心得てます。傷つけてしまいかねませんから」
多少のジョークは許されそうな雰囲気を感じつつも、肝に命じて答える。
相手を悲しませてまで自分の知的好奇心を満たしたいなんて、私は思わない。