• テキストサイズ

get back my life![アイナナ]

第2章 始めて掴まれて


 食事を終えると、和泉さんに声をかけられる。
 後片付けくらいは一人でさせてもらおう、と考えていた私にとって、予想してなかった呼び出し。
 まさか、何か失礼な事をしてしまったとか?
 嫌な考えがちらつきながらも、近寄った。
「なに?」
「出勤時刻は早めの午前九時、場所は事務所です。地図はここです。六弥さんと二階堂さんが着いて行って下さいます。東京は人が多いですから、はぐれないように。はぐれても身バレ防止のために、誰もあなたを呼んであげられませんからね。逢坂さん、七瀬さん、兄さんの三人も、少し遅れて事務所へ向かいます。私と四葉さんは学校があるので、終わってから合流です。何か質問は?」
 驚いた。
 色々と沢山の事を一度に言われたからじゃない。
 沢山の事を一度に言われたのに、そのテンポもタイミングも、私が理解できるペースで教えられて、驚いたのだ。
「質問は、ありません。ありがとう、行ってらっしゃい」
 デザートに王様プリン食べ損なった、と呟いて気分を沈ませる環くんの背を押しながら、二人分の通学鞄を肩にかける和泉さんを私が見送る。
 親切で、丁寧で、大人びていて、几帳面で、観察眼のある人。
 まだ出会って一日も経っていないのに、こんなに良いところばかりの、しかも現役高校生アイドル。
 なんてスペックの高い子なんだろう、とのんびり感心して。
 はっと時計を目にした。
 やばい、時間ないやん!
「洗い物手伝うで!」
 身支度は朝整えたままで良いし、手荷物も特に無い。
 出かけるまでの十数分を効率的に活用しないと。
 手を上げれば、三月くんと逢坂さんが指示を出してくれた。
 優雅なようで慌ただしい朝は、あっという間に過ぎて。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
 私は外人さんと眼鏡の人と一緒に寮を出た。
/ 190ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp