第7章 今日からお世話になります
気づけば、皆さん全員が私の方を向いていて。
はっとするも、どう立ち回りすれば良いかも分からない。
頭がまわらない。
ああ、どうしよう。
「えっと、その、あの、えっと」
「大丈夫か、一華? また具合でも悪くなっちまったか?」
言葉が出て来ない私に、三月くんが心配そうな顔で尋ねてくる。
「だ、大丈夫です、でも、その、あの」
まだ混乱している私を見て、和泉さんがため息を吐きながら立ち上がられて。
私の隣で、しゃがまれた。
「とりあえず、深呼吸して下さい。はい、箸を置いて。息を吸って・・・・・・吐いて・・・・・・」
和泉さんに指示されるままに、呼吸を整える。
和泉さんは、私の背中に手を添えて、私が落ち着くまで待って下さった。
「いちねえ大丈夫?」
「一華ちゃん、頑張って!」
環くんと陸くんにも、心配されながら。
私はただただ、呼吸を繰り返した。
返事も返せず、申し訳ない。
そう思いつつも、段々と頭がすっきりしてくる。
私が、もう大丈夫です、と和泉さんに言うと。
和泉さんは、眉一つ動かさずに、私から離れてご自分の席に着かれた。
「あの、和泉さん、皆さん、ありがとうございます」
私は座ったまま、頭を下げた。
「こんな私でごめんなさい。それから、ここに置いて下さって、ありがとうございます。お待たせしてしまったり、ご心配をおかけしてしまったり、本当にすみません。でも、きっとお役に立ってみせますから、どうか。どうか、私をもう少しだけ、ここに居させて下さいませんか?」
沈黙が長く続く。
それに耐えられず、私が恐る恐る顔を上げて、皆さんの顔を見ると。
皆さんは、音を立てずに、くすくすと笑っていらっしゃった。
「な、なんなん?」
思わず疑問を口にした私を見て、皆さんが更に大きく笑う。
ぷっ、と最初に吹き出したのは二階堂さんだった。
「いや、お前さん、最初の時にそう言えば良かったのにって思ってさ。おかしくって、悪いとは思うんだけど、ツボに入っちまった!」
明るく言う二階堂さんは、ついに大声で笑い始めた。
それに呼応するように、他の皆さんも声を出して笑う。
私は、なんだかよく分からないけど大いに笑われている事が、恥ずかしくなって。
また箸を取って、とりあえず夕食を食べた。