第7章 今日からお世話になります
「でしたら、ワタシも例にならって、セイダイに乾杯しましょう!」
「・・・・・・なら、私も」
私が再び席に着くと。
「よーし! じゃあ皆で一緒にぃ! 乾杯ー!」
「乾杯ー!」
三月くんの掛け声で、また声が重なる。
私の紙コップは、皆さんの缶やらマグカップやらにぶつかって、少し縁が歪になった。
でもそれも嬉しくて、なんだかニヤけてしまう。
ああ、私は今、ここに居る事を許されている。
・・・・・・・・・・・・。
――だけど。
きっとこのまま、この幸せに浸っていてはいけない。
なぜなら、私はこの手を穢した最低な人間だから。
本来なら、この場所に居なかったはずの存在で。
こんな素敵な人達に囲まれて良い存在じゃないはずで。
箸を持って夕食を一口つまむ。
美味しかったけれど、とても美味しかったけれど。
私には勿体ない食事に感じてしまった。
でも残すと申し訳ないし、食材に全く罪は無いわけで。
無言で口に運び続けた。
食事という動作をひたすら繰り返すのみ、になっている私に。
「大丈夫?」
と、声をかけてくれたのは環くん。
それまで和やかに会話していた皆さんが、箸を止めて一斉に私を見つめてくる。
私はどうすれば良いのか分からなくて。
それまで止めていなかった手が、箸をテーブルに置いてしまう。
目がきょろきょろとして、皆さんそれぞれの目と合ってしまった。
私は余計にパニックで頭が真っ白に。
何も持っていない両手が、ふわふわと宙をさまよう。
もぐもぐと口を動かし、口の中の物を飲み込んだ。
「あの・・・、えっと・・・」
大丈夫です。
の一言を言えば良いだけの話なのに。
その一言すら頭に浮かばない。
ああ、もう、ダメだ。
そう思った時。
「ただいまー、ってアレ? これどういう状況?」
二階堂さんが帰って来られた。
「あ、おかえりなさい!」
私は咄嗟に立ち上がり、二階堂さんに頭を下げた。
「お疲れ様でした」
「ヤマさんおつかれー」
「お疲れ!」
「大和さん! 早かったですね!」
皆さんも口々に二階堂さんに声をかけていて。
空気感が一変した。
やっぱり二階堂さんはリーダーだから、二階堂さんが居るだけで場の雰囲気が安定する。
どこかほっとしていると。
「おう、ただいま。それで? さっきは何があったんだ?」