第7章 今日からお世話になります
カーテンを閉めに行きながら、くるりと振り返る。
「三月くん、おかえりなさい」
「おう! ただいま!」
三月くんの表情が、ぱっと輝く。
その笑顔が、柔らかくて優しくて。
私は三月くんの人柄の良さを感じた。
カーテンを閉めると、私はすぐにお二人と共に一階まで降りた。
皆さん揃っていらっしゃると思っていた私は、テーブルの空席を見て首を傾げる。
「あの、二階堂さんは?」
私の疑問に答えてくれたのは逢坂さんだった。
「マネージャーと少し話があるらしく、今日は遅くなるそうです。先に食べていて良いとの事でしたので」
なるほど、と思う。
二階堂さんは、アイドリッシュセブンのリーダーだ。
トリガーの皆さんとの合同練習が始まって、何かと忙しいのかもしれない。
アイドルのリーダーって、具体的にどんな役回りをするんだろうか。
私には分からないけれど、何かお手伝いさせてもらえたら良いな。
私が自分の席に腰を下ろすと、和泉さんと三月くんも、それぞれの席に着いた。
三月くんが、明るくて優しい声で、私達を見回す。
ほうじ茶の入ったマグカップを手に持つ陸くんは、乾杯をしたそうな雰囲気だ。
私は、陸くんに合わせて同じ物が入った紙コップを手にした。
「それじゃあ、みんな今日も一日お疲れ様! いただきます」
「いただきます!」
全員で声を揃える。
陸くんは、私の方を真っ直ぐ見ていた。
「お疲れ様、陸くん」
「お疲れ様! 一華ちゃん!」
マグカップと紙コップを、ちょんとくっつける。
陸くんは、たったそれだけの事でとても嬉しそうにしていた。
「お、良いじゃん良いじゃん! 俺もビールで乾杯しようかな」
「じゃあ、僕も少しだけ頂きます」
「缶ビールで良いですか?」
三月くんと逢坂さんに尋ねると、二人とも頷いて、ありがとうと言ってくれた。
こんな少しの事だけれど、やっぱり、私は誰かの役に立てるのが嬉しい。
「グラスは要りますか?」
「俺はそのままで良いかな。壮五は?」
「じゃあ、僕も缶のままでお願いします」
「わかりました」
冷蔵庫から缶ビールを二本取り出す。
二人に手渡すと、また礼を言われた。
それが嬉しくて、私も笑顔になる。
「なになに? 皆でこれから乾杯、すんの?」
環くんの声音からは、高揚している様子が感じられる。