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get back my life![アイナナ]

第7章 今日からお世話になります


 和泉さんは、清々しい様子でお部屋に戻っていく。
 それを、私はぼうっと眺めてから。
 私も部屋に戻る事にした。
 する事が無いので、階段をゆっくり上がりながら考え事をする。
 さて、これから何をしようか。
 私の部屋は、何も無い。
 あるのは布団と、鞄と、服と、化粧道具と、カーテンと・・・他にはなんだっけ。
 棚も無ければ机も無く、当然、椅子だってありはしないのだ。
 そんな部屋で出来る事なんて、たかが知れている。
 だからこそ、私は悩む。
 あっ、そういえば。
 初日に鳥居先生から渡された、そこそこの量の書類があった。
 全く目を通さずに、今まで過ごしてきたけれど。
 せっかくやる事も無いのだから、今日の内に片付けてしまおうか。
 ・・・・・・できるかなぁ。

 部屋に入ると、隅に置きっぱなしにしていた、鳥居先生に渡された大きなバッグを覗き込み。
 鞄の中から十数枚の書類と封筒類を取り出した。
 それらは一本の輪ゴムで纏められており、それなりの、かさがある。
 私は、書類を拡げる前に、鳥居先生が残したあのメモを読み返した。
 メモに書かれていた事は、よくよく見ると驚きが大きいものばかり。
 例えば、私にとって和泉さんという存在は、元の世界に帰るために必要不可欠であると思われる、だとか。
 私が住んでいた赤叉棚の地は、私が居た世界にしか存在しないだろう事、だとか。
 アクーチャと私が似ている事も多分偶然ではない事、だとか。
 こっちの世界で大阪に帰ったとしても家族と会うのはきっと無理な事、だとか。
 全てカタカナで書かれていたから、頭に整理して理解するのが遅くなったけれど。
 確信した。
 鳥居先生は、何か重要な事を知っている。
 もしくは、直接関わっている。
 でなければ、これほどの情報を私に、渡してもらえるはずが無いのだ。
 それも、一日も無いたった数時間の内に。
 思えば、鳥居先生は出会った時から不思議な人だった。
 私の事を流れ者とやら、だと判断した理由も不明だし。
 瞬時にうつ病だと診断してくれたのも、どうして分かるのかと疑問に感じるくらいだ。
 勿論、私は医学の専門家なんかじゃない。
 ド素人だ。
 でもだからこそ、疑惑がわいてくる。
(鳥居先生の事、私、信じて良いんやんな?)
 不安になりながらも、メモに書いてある最後の行を指でなぞる。
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