第7章 今日からお世話になります
「お気になさらず。私も勉強の復習をじっくりしたかったので、丁度良かったです。仕事とはいえ、アイドルをしていると、勉強がおろそかになってしまいがちですから」
不思議に思って、私は頭を上げた。
「和泉さんのような人でもですか? 何でも、そつなくこなせそうに見えますけれど」
と、疑問を口にすると、和泉さんは笑った。
「私だって、苦手な事くらいありますよ」
「そうなんですね」
そっか。
そりゃあそうだよな、和泉さんだって一人の人間で、しかもまだ高校生なんだから。
納得した私は、もう一度軽く頭を下げて、部屋の中に戻った。
部屋着に着替えて床に就くと、私はすぐに眠りに落ちた。
今朝早くに目を覚ましてしまった、少々の寝不足が手伝ったみたいで。
夢の中に入ると、悪夢も何も見ずに済んだ。
少しの居眠りのつもりが、ふと目を覚ますと外が夕暮れで。
ぼんやりする間もなく身なりを軽く整え、急いで和泉さんの部屋へ向かった。
ドアをノックすると、はい、と応答が返ってきてすぐに扉が開き、和泉さんが顔を出してくださった。
「すみません! 寝てました!」
勢いよく頭を下げると、和泉さんは。
「良かったじゃないですか」
と、笑って仰った。
「怒らないんですか?」
「なぜ怒らなければならないんですか?」
「それは・・・・・・」
少し考える。
謝った理由がすぐには分からなかったが、和泉さんの顔を眺めながら、私は一生懸命考えた。
「それは、私だけお休みしてしまったからです」
「病人は休むのが仕事でしょう」
「でも! 和泉さんだって朝早く起きていらっしゃったのに、私だけ寝てしまうなんて。なんか、申し訳なくて」
だから。
と、口にして、私は改めて感じた。
自分だけ、ぐーすか寝ていて和泉さんはお勉強。
本来なら私だって仕事に勤しんでいるはずの時間に、一人だけ休んでいる。
その罪悪感。
何かしなくては、と思った。
そんな私の焦りに、和泉さんが気づいてくださったのだろう。
「それなら、何か甘い物でも食べましょうか。丁度、勉強も一息つきたいところだったんですよ。パンケーキなんてどうですか。簡単ですし、あなたでも作れるでしょうから」
私は、一も二もなく頷いた。
「作ります! 精一杯、作らせて頂きます!」
・・・が私はパンケーキ作りを甘く見ていた。
