第7章 今日からお世話になります
「それ、相手の家でもある場では、使わない言葉では?」
眉をひそめて言われてしまい。
またやってしまった、と私は思った。
ちなみに、和泉さんの分は和泉さんのマグカップに、私の分は紙コップに緑茶が入っている。
どのカップが、どなたの物なのか、今の私は完全に把握しきっていた。
慣れたものだなと、我ながら鼻高々になっていると。
「さすがに、そろそろ買うべきですね。今日・・・は休むべきとして。次のあなたの休みはいつでしたっけ?」
と、不意に聞かれる。
私は特に何も考えず、スケジュールを思い起こして。
「えっと、今日は仕事に戻れたら戻りたいですし、明日も午後から仕事がありましたし・・・、明後日、でしょうか?」
「明後日ですね、わかりました。ではその日に、一緒に買い物に行きますよ。それから」
キリッとした眼差しを向けられる。
これは何かご忠告を受けるな、という予感は見事的中してしまった。
「今日は絶対に、あなたを部屋から出しませんからね。病状を悪化させたいんですか、あなたは? はあ、目が離せない人ですね」
心底呆れられた声で言われてしまい私は、まだ熱い紙コップを口元に持ってきて。
小声で。
「すみません」
と、言った。
和泉さんに虚勢は通じない。
心からそう思った。
お茶を飲み終えると、特に話す事も思いつけなかったので、私は部屋に戻される事になった。
「鳥居先生から頼まれたので、仕方なくですよ」
と、和泉さんは言った。
お手をわずらわせてしまって申し訳ない。
きっと勉強やお仕事でご多忙だろうに、私なんかの為に寮まで着いてきてくださった。
多分、和泉さんは今日はお仕事お休みになってしまったのだろう。
「あの、色々とご迷惑かけてすみません」
部屋に入る前に、扉の外で和泉さんに頭を下げる。
「何の事を仰っているのか、理解しかねます」
頭を下げたまま、私は言葉を選んだ。
「今日和泉さんは、本当はお仕事してらっしゃったはずですのに、私なんかの為に着いてきて頂いて。あと、車の中でも、その・・・・・・、驚かせてしまって、すみませんでした」
「車の中? ああ、あなたが泣いてた事ですか?」
ずばりと言われると恥ずかしい。