第7章 今日からお世話になります
「・・・大丈夫そうには、とても見えません。私は、また山中さんが体調を崩されてしまったら、と心配しています。無理はしないで下さい。アイドリッシュセブンの皆さんにとっても、山中さんの事は気がかりでしょうから。なにせ、皆さんお優しい方ばかりですし、私だって山中さんに我慢してほしくありません。山中さんから見れば私はまだまだ幼いかもしれませんが、上司なんですから、どうか頼って下さい」
紡さんは、胸に手を当てて訴えかけてくれた。
気持ちは、嬉しいし、ありがたい。
でも。
年下に頼るなんて、そんな恥ずかしい事できない。
私は、作り笑いをした。
「本当に大丈夫ですから。私は、大丈夫なんです。だから放って置いて下さい」
ちょっと、キツい言い方になってしまった。
なのに、紡さんは引き下がってくれなかった。
「それ、無理に笑ってますよね? 分かります。一織さんから聞きました。山中さんは、無理してる時は眉が寄るって。今、山中さんの眉、寄ってるんですよ?」
眉が寄るなんて、自分でも気づいてなかった。
私は眉に入ってる力を無理矢理抜こうとしたけれど。
・・・・・・ダメだった。
今、眉の力を抜いたら、私はまた泣いてしまう。
「そう見える錯覚じゃないですか?」
「違います。絶対寄ってます。ですから、どうか頼って下さい。難しい事は難しい、辛い事は辛いで良いんです。ご病気は、どうしようもない事なんですから」
「違うって言ってるじゃないですか!」
思わず叫んでしまってすぐに、はっとした。
部下が上司に怒鳴るなんて、非常識にも程がある。
こんな自分は自分じゃない。
こんな事、言いたかった訳じゃない。
・・・・・・どうすれば。
どうすれば良いのか、と頭を抱えようとした時。
「ソーリー、ここはあたしに任せてくれないかい?」
第三者の声がした。
鳥居先生だ。
いつから居たのだろう。
いつから、聞かれていたのだろう。
トイレの扉を押し開け入ってきた鳥居先生の姿を見て、私は反射的に両腕を抱きしめた。
「来ないで下さい! 私、今・・・・・・!」
普通じゃない、と、絞り出した声で訴えた。
そんな私に、鳥居先生はすぐに駆け寄り、紡さんを押しのけて。
抱きしめられた。
とても、とても温かい抱擁だった。