第1章 落ちて拾われて
「ついさっき顔を合わせた相手を、無条件に信用しろという方が無理な話です。私なら、何か裏があるんじゃないかって、つい疑ってしまいます。だから私は、皆さんに証明しなければならないと思いました」
きっと、他人と過ごす上で重要なのは、これに尽きるはず。
口を挟まず野次も飛ばさずに、ここまで静かに聞いてくれたこの人たちだ。
どの子もきっと、良い人なんだと確信できるからこそ、私も自信を持って提案できる。
「皆さんにとって、私の存在からメリットを得られるようにします。お一人につき、一つずつです。それまで誠心誠意、努力させて頂きます事を誓います」
深々と頭を下げた。
最後まで言って、少しだけスッキリする。
かの偉大な魔法使いみたいに、勇気や心や脳を求められる事は無いだろうけれど。
一見不可能に思える事でも、見方を変えれば打開策が出たりする物だ。
きっと何とかなるだろう。
そうは思っていても、怖いものはやっぱり怖い。
頑なに拒絶されたり、頭から否定されればどうしようも無いのは変わらない。
私はだいぶ強引な策に出てしまった。
頭の柔らかい人なら、こんな提案は面白がってもらえる事だろうけれど。
彼らがどんなアイドルなのか知らない私は、半ばヤケになってこの方法を取ってしまった。
素直に助けて下さいと言えば良かったな、なんて思ってももう遅い。
続く沈黙を突き破ったのは、断りも無しに玄関を開けて入ってきた、彼女の足音だった。
「ハロー、星屑たち。話はどこまで進んだんだい?」
大きな大きな荷物を肩に、場違いな明るさで踏み込む鳥居先生、その人だ。