第7章 今日からお世話になります
私のすぐ後ろを、二人ともがついて来た。
下に降りると、食事の用意は既に整っていて。
皆さん既に席に着いて、先に食べ始めていらっしゃった。
「おはようー」
と、ゆったりとした雰囲気で口々に挨拶される。
私は、少し頭を下げて答えた。
「おはようございます。皆さん、今日はお仕事とか早いんですか?」
「そーそー、いちねえ聞いてくれる? いおりんが今日、日直で遅刻したらダメだっつーから、俺まで早起きさせられてんの。ひどくない?」
環くんは、子どものように口を尖らせる。
それを斜め前で聞いていた和泉さんが、眉を寄せて反論した。
「ひどくありません。一緒に行かなかったら、四葉さんが遅刻するのは本当ですよね? 遅刻は良くありません。私達はただの学生じゃないんです。遅刻癖のあるアイドルなんて、評判良くないじゃないですか。そういうイメージも大事なんですよ」
「あーもう! いおりん朝からうるさい。いちねえ助けて」
なぜここで私が呼ばれるの。
助けてと言われても、和泉さんの言ってる事は正しいし。
それに、環くんが一人で学校行ったら遅刻しそうっていうのも頷ける。
かと言って、ここまで正論でぶっ叩かれたら良い気はしないだろうな、というのも分かるから。
私はとりあえず腕を組んで、頬に片手を添え、環くんが受け入れられそうな文言を一生懸命考えながら、優しい言葉をかけてあげる事にする。
「早起きできて偉いね、環くん。確かに、朝から叱られるのは嫌だよね。でも、私は、和泉さんが言ってる事が間違いだとも思わないの。遅刻しない環くんは、きっと格好良いと思うから」
「俺、エラい? 格好良い?」
「うん、環くんは偉いし、いつだって格好良いよ」
「やった! いちねえにほめられた!」
無邪気に喜ぶ環くんを見て、これで正解だったのだろうと安心する。
両隣に立っていた三月くんと逢坂さんが、感心したように私をほめてくれた。
「一華は環の扱いが上手いな!」
「本当ですね。良かったね、環くん」
「それより、御三方も早く食べ始めたらどうですか?」
と、和泉さんが私達に言った。
環くんはご機嫌だけれど、和泉さんは対照的に、しかめっ面をしている。
この二人は同い年だからなあ。
環くんばかりほめて、和泉さんの事は考えてなかった。
これは、私が悪いのだろうか。
