• テキストサイズ

get back my life![アイナナ]

第7章 今日からお世話になります


 それ以上、どう話せばいいのか分からない私に。
 はい、と、和泉さんが続きを促すように相槌を打って答えてくれる。
 そこに冷たさをまるで感じなくて。
 私は、胸に手を当て息をつきながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「内容は、よく覚えてないんですけど」
「はい」
「こういう事、私は月に何度かあるんです」
「はい」
「それで、星を見たいと思って」
「星、ですか?」
「そうです」
 聞き返す和泉さんは、怪訝そうに窓の外を眺めた。
 確かに、今回は曇り空で星は見えなかった。
 和泉さんは夜空がいつもより暗いと気づいていたのだろう。
「それで?」
「それ、で・・・・・・星は見えなくて」
「はい」
「散歩しようと思って」
「はい」
「少し、歩いていました」
「そうですか」
 そこまで話し終えると、コーヒーを渡される。
 私は黙って受け取り、ずずず、と啜った。
 熱い。
 でも、飲めない熱さじゃない。
 和泉さんも、自分のコップにコーヒーを淹れて飲んでいる。
 私は、先に謝っておく事にした。
「すみませんでした」
「何がですか?」
 和泉さんは、頭を下げた私を見下ろしてから、ゆっくりとリビングに移動する。
 私はその後ろをついて行った。
「勝手に夜中に出歩いてしまって」
「なぜ悪い事なのかは、分かってますか?」
 テーブルにコーヒーを置いて腰掛けた和泉さんの。
 目の前に私が立って、考える。
「また風邪を引くから、ですか?」
「もちろん、それもありますが」
 和泉さんは、一度コーヒーを啜り、コトンとテーブルにコップを置いて、コップから手を離した。
 和泉さんはコーヒーを飲み干している。
 早い。
「どちらかというと、不審者に気をつけるべき時間帯ではあります。そんな薄着で外を出歩くなど、自らターゲットにしてくれと言っているような物です。控えて下さい。それに、あなたはまだ若い女性ですよ。通り魔にでも遭ったらどうするつもりだったんですか。世の中、物騒な所もあるんですから、その辺ちゃんと気をつけて頂かないと、困ります。あなたはまた救急車に運ばれたいんですか? 鳥居先生にはその時、何と言って詫びるつもりです?」
「すみませんでした・・・」
 チクチクと刺さる言葉達に、私は素直に謝るしかできなかった。
 鳥居先生の名前を出されては、私は何も言えない。
 ご迷惑をおかけしている自覚はある。
/ 190ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp