第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある
すると、陸くんの手が私の両手から逃げるように、さっと抜き取られる。
一体どうしたんだろうと、陸くんの顔に目をやると。
陸くんは、耳を真っ赤にして、両手で顔を覆っている。
どうやら、また恥ずかしがらせてしまったらしい。
「ごめんね?」
眉を下げてそう言うと。
「ううん! こっちこそ、ごめん!」
と、逆に謝られてしまった。
リビングに入ると、皆さん勢揃いで。
紡さんも椅子に座って、お茶か何かを飲んでいた。
思い思いの態勢で私を待っていたのか、皆さん私の顔を見るなり。
遅い、と叱られてしまった。
和泉さんは、私の後ろからひょこっと出てきた陸くんの顔を覗き込み。
「熱測りますか?」
と心配そうに尋ねていた。
それを聞いて、私はようやく、自分がやり過ぎてしまった事に気づく。
「ごめんなさい、和泉さん。それ私のせいです」
ぺこりと頭を下げて事情を説明し終わると、和泉さんは腰に片手を当て。
呆れた顔で私を見下ろしてくださる。
皆さんの顔を見渡せば、六弥さん以外の全員が顔をほんのり赤らめていて。
本っ当に、自分がやり過ぎたのだと実感した。
二階堂さんは、つかつかと私の目の前まで歩いてくると。
両肩をがっしりと掴まれて。
「今日はもう遅いから早く寝なさい。あと、明日俺の部屋でお説教だ」
と、笑っていない笑顔で言われた。
人付き合いって難しい・・・・・・。
そんなこんなで、怒涛の一日が終わった。
私はまだ、この世界に慣れていないし、この生活にも慣れていないけれど。
少しずつ慣らしていって、いずれは皆さん全員にちゃんとメリットを渡せる人間になりたい。
と、思った。
その前に。
私はまず、男の子との適切な距離感と言う物を。
二階堂さんから、嫌という程叩き込まれるのだけれど。
それはまた、別のお話。