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get back my life![アイナナ]

第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある


 それ以外に言う事は無いのか、と私は腹を立てるけれど。
 その苛立ちは、何か違う気もして。
 ふう、と深く息を吐き出しながら、私は怒りを忘れる事にした。
 とは言っても、人の感情という物は、そんな簡単に入れ替えられる物ではないから。
 ムッとした感情を少し引きずりながら、いつか忘れる時を待つのが、正解だと私は思った。
 気づけば、外は雪が降っていた。
 最初は雨かと思っていたけれど。
 車のライトに照らされていたのは、ちらちらと白く輝く粉雪。
 ここは都会とは言え、冬なんだから雪くらい降るかと思い直しながら。
 私は雪の美しさに見とれて、怒りを忘れる事が出来ていた。
「着いたよ」
 鳥居先生が、寮の真下に車を停車してくれる。
 私はシートベルトを外し、助手席から降りた。
「ありがとうございました」
 ぺこりと頭を下げて言うと、鳥居先生は軽いウインクで返してきた。
 どういう意味だろうか。
 鳥居先生は、そのまま無言を貫いて、車を走らせる。
 私は、もう一度軽く頭を下げると。
 寒さに纏わりつかれないよう、そそくさと寮の中へ入っていった。
「ただいま戻りました」
 私がそう言いながら靴を脱ぐ。
 リビングのドアが開かれて、奥から出迎えに来てくれたのは陸くんだった。
 歩いてきた姿は元気そのもので、なんだかすごく嬉しそうな顔をしている。
「おかえりなさい! 今ね、ちょうど一華ちゃんの事話してたんだよ!」
 私の事?
 そう聞いて、つい嫌な想像が働いてしまう。
 今日は私は、色々とやらかしてしまっている。
 主に、トリガーさんの前で。
 あと和泉さんと二階堂さんの前でも。
 陸くんの前では、何もしていないはずだと思って。
 いや、待てよ、と考えを改める事にした。
 皆さんの喧嘩が収まって、その後私の部屋に皆さん勢揃いでいらっしゃった時。
 陸くん、私にいっぱい話しかけてくれてたけど、その内容何も覚えてない!
 もしかしたら、上の空だった事がやはりバレてて、私はついにこの寮を追い出される日が来てしまったのか!
 そうなのか?!
 と、いう不安は杞憂だったようで。
「一華ちゃん、天にい達が来るまでの間、部屋の換気してくれてたんでしょ? 天にいから聞いたよ!」
 私はそれを聞いて胸を撫で下ろしながら、こんな事を考えていた。
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