第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある
そして、話はそれで終わって。
私と二階堂さんは、二人で部屋を出た。
一階まで降りると、二階堂さんを除くアイドリッシュセブン全員と、紡さんに鳥居先生まで揃って、私が二階堂さんと一緒に降りてくるのを待っていたようで。
紡さんが寮の中に居るのは分かるけれど、鳥居先生まで居るのは、なぜ?
と疑問に思う。
最初に私に話しかけてきたのは、陸くんだった。
「話し合い、終わった? おつかれさま! 俺はね、今さっき一織と振り付けの確認してたんだ! 壮五さんと環は十さんの話してて、三月とナギはずっと一華ちゃんの話してたよ! 鳥居先生はずっと俺達の話聞いてた!」
待て、私の話だと・・・?
やはり何かご迷惑をおかけしていただろうか。
すぐ不安になる私の背中を、バーンと強めに叩いたのは鳥居先生。
急に近寄られてシバかれた事に、驚きとそれを遥かに上回る怒りが湧き上がる。
痛い、めっちゃ痛い――!
「気にしなくて良いよ、一華。さあ、診察の時間だ。これから一緒に病院へ行くよ。何か不調はあるかい?」
遅れて咳が出ながら、不調とは、と考える。
そんな私の肩を優しくさすってくれるのは、隣に立っていた二階堂さん。
こんなに優しい人なんだな、本来は。
私は少し落ち着きを取り戻せながら、二階堂さんの優しさに少し甘えさせてもらって、ゆっくりと思考を巡らせる。
「不調って、ここで言わなきゃ駄目ですか?」
まず思い浮かんだのはそれで。
正直、これだけ大勢の人の前で、自分の弱点を語るのが怖い。
「無理にとは言わないよ。でもね、いつかは情報共有すべき事もあると思うんだよ、アタシはね。特に、和泉一織くんにはね」
どうして和泉さんの名前が出るのかは分からなかった。
私は、皆さんの顔を順番に見ていく。
表情が、誰も明るくなかった。
特に和泉さんは真剣な顔をしていて。
私は、なぜ皆さんがそんな顔をしているのかが全く分からない。
「山中さん・・・」
心配そうに呟くのは紡さん。
たまらず、私は首を振って作り笑いをした。
「や、やだなあ。皆さん揃って深刻そうな顔しないで下さいよー。私は全然平気ですから、どうか笑って下さい。ほら、三回まわってーからの、ワン! なんちゃってー!」
「・・・・・・」