• テキストサイズ

get back my life![アイナナ]

第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある


 私は、今同じ事をしてしまっていたのだ。
 頼られないもどかしさ。
 それを、和泉さんに抱えさせているのは私だ。
 私は、和泉さんと自分とを秤にかけた。
 話す事は、怖い。
 でも話さなかったら、和泉さんが可哀想だ。
 心配かけさせてしまって、その上厚意を無下にする訳にはいかない。
 話すのは、勇気がいる。
 でも、和泉さんは私が話す事を望んでくれている。
 だったら、話すしかない――!
 私は深呼吸をして心を落ち着かせ、顔を覆っていた手を下ろした。
「私、が・・・不甲斐ないばかり、に・・・皆さん、に、気を・・・遣わせて、しまい、ました。私は、皆さん・・・の、ご期待に、添えず・・・そればかりか、今、も・・・こうして、和泉さんの、お手を煩わせてしまって・・・誠に申し訳ござい、ません・・・」
「そんなの良いんですよ」
 和泉さんは、首にかけていたタオルで、私の涙を優しく、優しく拭いてくれた。
 いつもの、少し呆れの混じった声で。
 でもどこか、優しい声で。
 和泉さんは私に、ゆっくりと諭すようにこう言った。
「良いですか。失敗なんて、誰にでもある事です。私だって失敗くらいしましたよ。それも、思い出したくもないような、大きな失敗です。あなたの失敗は、私の物に比べれば月とすっぽんですよ。ごくごく小さな失敗じゃないですか。それくらいで、私達のマネージャーが凹んでどうしますか」
「マネージャーって、私の事ですか?」
「そうですよ、あなたは私達の現場マネージャーでしょう。私達はもっと大きな失敗を経験しています。でも今でもこうして活動できているでしょう? あなただって、もっと大きな失敗をして、そしてそれを経験にして、成長して行くんです。私達のマネージャーが、私達に置いて行かれても良いんですか?」
 その言葉は、まるで魔法のように、私の心に入り込んだ。
 私が、アイドリッシュセブンの、現場マネージャー。
 私は、アイドリッシュセブンに、置いて行かれたくない。
 その、為には――。
 凹んでいる場合じゃない。
 私の涙は止まっていた。
「ありがとうございます、和泉さん。私は、私に出来る精一杯の事をしようと思います」
「ぜひそうして下さい」
 和泉さんは、柔らかく笑っていた。
 そんな私達を、影から静かに見ていた人物が居たなんて、気づきもしなかった。
/ 190ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp