第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある
その後、八乙女さんを三つ目のレッスン部屋へお連れして、私はそこで皆さんに一声かけてから寮をでた。
アイドリッシュセブンの七名とトリガーの三名、合計十名分の水分が必要だった。
レッスン内容は歌と踊りの練習。
ペットボトルのニリットルを一人一本、買ってくるつもりだ。
お腹も空くかもしれないから、何かお菓子も用意すべきだろうか。
財布を開いて金額を確認する。
ギリギリ足りないかもしれないが、そこは上手く計算してやりくりしよう。
何せ、私の所持金は全て、鳥居先生から借りた物。
いつかちゃんと返さなくちゃいけない。
足りなくなったのでもう一度貸してください、なんて言うわけにはいかないし・・・。
私は、予め調べていた近所のスーパーへ入る。
事務所のパソコン情報だ。
情報化社会のこの時代、パソコンは何でも教えてくれる。
どの場所にどんなお店があって、何が値下げしているかまで分かった。
文明の発達ってすごいよね。
私が子どもの頃なんて、携帯電話すら無かったんだから。
都会は道が分かりにくくて、私はあんまり得意じゃないけど。
こういう利便性が高いところは、とても助かる。
スーパーの中は、本当に何でも売っていて、野菜や肉類の食料品はもちろん、衣類や日用品、常備薬のコーナーまで揃っていた。
都会ってすごいんだなぁと感心しつつ、目的の飲料コーナーへ進む。
試しにニリットル足らずの炭酸飲料を片手で持ってみたけれど、想像以上に重たい。
人数分を一度に買うのは難しそう。
仕方ない、何度かに分けて買っていこう、そうしよう。
お茶と炭酸飲料と果実ジュースにミネラルウォーターを一本ずつカゴに入れて、レジに並ぶ。
寮に帰ったら、ついでに飲み物のリクエストを聞いてメモしよう。
寮まで帰ってくると、ビニール袋を玄関先にどんと音を立てて置く。
スーパーと寮までの距離はそこまで遠くないのに、気づけば息が切れていた。
靴を脱ぎながら、呼吸を整える。
なんか、思ってたより疲れたかもしれない。
(めっちゃぜぇはぁする。次はちょっと休憩してから行こかなぁ)
歩きで行ったのも、疲れた理由の一つかもしれない。
こっちの世界に来てからは電車通勤になったけれど、私は元々自転車通勤だった。
買い物も勿論自転車を使っていたし、何なら基本的に移動手段が自転車だった。
