第6章 成功の影には必ず何者かの失敗がある
紡さんのお言葉に甘えて、分からない事を沢山質問させてもらった。
まず、現場マネージャーとは。
名の通り、現場で仕事をするマネージャーの事だ。
紡さんはアイドリッシュセブンの担当マネージャーで、私という部下を持ったので、チーフマネージャーという立場になるらしい。
チーフマネージャーは、事務所に残り方方に連絡したり、営業をして担当タレントさんのお仕事をもらったり、とにかく色々と責任ある仕事内容が多く。
また、担当タレントさんの傍に着いて回るのがあまり多くない。
反対に、現場マネージャーはいつもタレントさんの傍で控えて、一緒にお仕事する人達との良い関係づくりと、担当タレントさんの身の回りのお世話、などが多い。
私一人で大丈夫かなという不安はあるが、今日の現場はあまり難しい事はしないだろうとの事で、私に任される事になったらしい。
場合によっては、ただ傍で控えていて何もしなくて良いかもしれないから、なんて言われた。
いやいや、さすがにそれじゃ、私に罪悪感出ますって。
それから、寮に戻るというのは、今日のアイドリッシュセブンのレッスンが、寮の三階の空き部屋を使って行われるからだ。
なんでも、トリガー、という別のアイドルグループとの、合同練習が始まるらしい。
それは大きなお仕事で、紡さんも大神さんも、成功させる為に一生懸命頑張っているとか。
という事で私が実際にする仕事内容は、というと。
アイドリッシュセブンとトリガーさんとの合同レッスンの付き添い、ただそれだけの事というわけだ。
会った事のない人達とも一緒にお仕事する事になるけれど、やるべき事はとてもシンプル。
なるほど、これなら新人の私でも、なんとか出来そうだと思った。
「それで紡さん。そのトリガー、っていう方達には、何か気をつけるべき事はありますか?」
私が尋ねると、紡さんは少し考えてから、優しく答えてくれた。
「そうですね、まず他事務所のタレントさんですから、失礼の無いように気をつける事と。あ、あと、九条さんという方と陸さんが、あまり大きな喧嘩にならないように、注意して見てあげて下さい」
・・・・・・ケンカ?
なぜケンカに注意しなければならないのだろう。
そんなに仲が悪い二人なのかな。
大丈夫だとは思いますけれど、と紡さんが苦笑いしながら付け加える。
