第5章 トリガーの襲来
そのまま、二階堂さんの隣で、私はまた眠ってしまっていた・・・らしい。
どうやらその時、かなり込み合った修羅場が繰り広げられていたらしい・・・と、翌日になってから紡さんが教えてくれた。
情けない話、私はその辺の記憶が全く無い。
気がついたら真夜中で、気がついたらソファの上で、気がついたらテーブルに「出前の蕎麦は冷蔵庫の中にあるから食えよ」という書き置きがあって、特に記憶の整理もせずにお蕎麦を頂いてお薬を飲んで、そのまま自分の部屋に戻って朝を迎えた。
朝食の時には、二階堂さんは二日酔いとの事でギリギリまで自室で寝ていて。
三月くんも頭を痛そうにしていた。
私は朝食に同席はさせてもらったけれど、昨日の夜リビングで寝てしまっていた事を和泉さんに咎められてしまい。
今日も私は一人だけ、お仕事をお休みする事になってしまった。
猫の事を和泉さんに問いかけると、それは大丈夫でしたのであなたは早く風邪を治して下さい、とやや強めに言われる。
逢坂さん、環くん、六弥さんは、怒ってたり悲しんでたり、なんだか不機嫌そうな雰囲気で。
陸くんは無理矢理に笑顔を貼り付けた顔をしているかと思えば、急にしょんぼりしたり、ぶつぶつ何か文句を呟いたりと、こちらはこちらで荒れている。
とにかく、皆さん揃って元気じゃないみたいだった。
何か自分にできる事は無いだろうか、と和泉さんにそれとなく聞いてみると、家の事を軽くやっておいてほしい、と言ってもらえた。
私の状態は、少し眠くなるだけで、別にもう熱がある訳でも無いのに。
大人しく部屋で休んでなさい、と珍しく優しい口調で私に言ったのは、二階堂さんだ。
朝お水とコーヒーを運んだ時に、頭を優しく撫でられながら忠告された。
元気だから出勤できると答えても、元気な奴が酔った男の横で寝ちゃうとかありえないでしょ、って。
それを言われてしまうと反論に困ってしまい、私はすぐに二階堂さんの部屋から出されてしまう。
黙って出勤の支度をしようと考えていたら、和泉さんや三月くんからも、今日も休めと言われてしまった。
二階堂さんに冷たくされなくて良かったとは思うけれど、あまり病人扱いされるのも嬉しくないな、と感じた。
皆さんが事務所へ向かうのを、玄関先で見送ると。
私は早速洗い物に取り掛かった。