第5章 トリガーの襲来
私も雰囲気に酔っているのかもしれない。
そんな事を思いながら、お客さんの歌と踊りを鑑賞しながら、よく分からない言葉に、めんそーれ、だけで相槌しながら。
時間は容易く、実に早く過ぎ去っていく。
和泉さん達の帰りが思っていたよりも遅いなと感じてはいたけれど。
もしかしたら、子猫を見つけてお家まで帰してあげているのかもしれない。
と、自分で勝手に答えを出して、和泉さんと環くんの事をあまり考えてあげられなかった。
そうこうしてる間に、夕飯は出前を取ろうという事になって、一緒にお蕎麦をごちそうになる事に、なっていた。
なっていた、というのは、私はほとんど会話の内容について行けていなかったからだ。
どうやらかなり酔ってしまっているらしい二階堂さんが、私にしきりに酌を求めては、私の頭をガシガシと撫でてきた。
お客さんは、されるがままの私に相変わらず、にこやかに何言ってるか分からない言語で話しかけてきて。
唯一まともかと思っていた三月くんからも、ノリと勢いか何なのか、同じく頭を撫でられていた。
居心地悪いとまではいかなくとも、少々度が過ぎた歓迎をされている気はしたので。
私はちょっと疲れを感じながら、席を立つタイミングも見つけられず。
とりあえず場の空気に合わせるようにして、愛想笑いを浮かべていた。
ちなみに、お客さんには一度、英語での会話を試みてみたのだけれど、上手く伝わっているのかどうかすらも判断できなくて。
確実に返事をもらえるめんそーれを言った方が面倒じゃないので、早々に諦めた。
残念ながら、私は元々語学が堪能じゃない。
お蕎麦の出前はものすごく早く着いた。
受け取りに席を立った三月くんが、私は座ってて良いと言ってくれたのと、私の頭が二階堂さんの手の中にあった事から、私はそのまま待っていた。
リビングに帰ってきたのは、三月くんと、華やかな顔のお蕎麦屋さんと、今さっき来たらしい紡さん。
また派手な顔立ちの人が増えたなー、と私がぼんやり思っていると。
なんか良く分からないけど、陸くんの部屋から、陸くんの部屋に居たお客さんが、すごい怖い顔して出てきた。
この頃になってくると、私の頭はいよいよ回らなくなっていて。
秒で騒がしくなる周りに反して、私は疲れのせいか風邪のせいかお酒の匂いで酔ってしまったせいか、完全に思考が止まっていた。
