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get back my life![アイナナ]

第5章 トリガーの襲来


 ――それが、つい数分前の出来事だった。
 寮の中を三階から二階、二階から一階へと探し回り、共有スペース全ての場所を見てきた。
 お風呂場、トイレ、洗濯機の中まで、猫が入れそうな場所は全部見たけれど。
 白い子猫なんて、どこにも見当たらない。
 ついには探す場所が無くなって、皆さんの個室も見せてもらった。
 三月くんの部屋から逢坂さん、陸くん、と順々に巡って、事情を説明してそれぞれ中を少し確認させてもらう。
 外出中の三名を除いて、どの部屋も特に問題なく見せてもらえたが、やはり猫は居なかった。
 和泉さんと環くんは猫探しのため外出中、二階堂さんも理由はよく知らないけど外出中、六弥さんは逢坂さんと同じ部屋に居た。
 陸くんの部屋は最後に見せてもらったけれど、お客さんが来てたし、私は風邪が治りきっていない事もあって、あまり長くお邪魔する訳にもいかなかった。
 ・・・というか、お客さんが皆さん、華やかな方ばかりで内心びっくりしている。
 陸くんの部屋以外にも、逢坂さんの部屋に二人、別のお客さんが居た。
 何やら六弥さんは、お客さんの一人がすすめるアイドルグッズに囲まれていて。
 逢坂さんは、お客さん達二人共に、少し萎縮しているようにも見えた。
 短髪の人のお相手をしているのが六弥さん、長髪の人のお相手をしているのが逢坂さん、だったと思う。
 陸くんのお客さんは、比べて若く見えて、やや華奢な印象があった。
 向かい合って座っていた陸くんが、なんだか楽しそうに見えたので、悪い人じゃなさそうだ。
 どのお客さんも、私が新人の社員だと名乗っても、あまり関心を向けずにいてくれたのが、実は気楽に猫探しに集中出来た理由でもある。
 が、和泉さんと環くんには申し訳ないけれど、私は猫ちゃんを見つけられなかった。
 ここまで探して見つからないのなら、一度諦めて自分の部屋で待機しているのが良いかもしれない。
 そう思った時だった、寮のインターホンが鳴らされて、二階堂さんがお酒の匂いを纏って帰ってきたのは。
 出迎えた私と三月くんが、その強い匂いに鼻をしかめていると、二階堂さんの後ろからまた一人、新しいお客さんが入ってきた。
 所々日本語っぽい単語が聞こえるけれど、何を言っているのかは、さっぱり分からない大きい男の人。
 始終陽気に笑う彼もまた、華やかな顔立ちをしている。
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