第5章 トリガーの襲来
素直な自分の気持ちを率直に伝えたつもりで、恥なんて無かったのに。
三月さんの顔を見ていたら、こっちまで照れてしまいそうだ。
ただ一言、全部と言うだけにしておけば良かった。
私がふい、と顔を背けると、三月くんに急に額を触られた。
「顔赤くなってる。熱が出てんじゃねえか? 今日はもういいから、部屋でゆっくり寝てろって」
「いや、これは多分熱じゃないと思うんやけど」
「無理すんなって。ちょっと熱いぞ。自分で体調良いって思い込んで、下手に動いて、それで悪化したらどうすんだよ。場合によっては一華の事、隔離しなきゃならなくなるかもしれないだろ? 変な意地はらずに、休めって。別に手伝ってほしい事とか無いし、今までずっと七人で上手くやってたから、人手が足りない事もねえからさ」
三月くんは、私を気遣って言ってくれている。
わかってる。
わかってるけど。
私が邪魔みたいに言われてるんじゃないかって、勝手に思ってしまって。
もしかしたら、三月くんも私の事嫌いなんじゃないかって。
つい、そんな考えがよぎってしまって。
「そんなん決めつけんといて! 元気やもん! 私はお荷物になんかならへん! 絶対に、私が必要やって言ってもらうまで! 諦めへん! 諦めへんもん! 休んだら、除け者にするやん! 置いてかれるやん! そんなん嫌や!」
「ど、どうしたんだよ急に。大丈夫か?」
三月くんが私の腕に軽く触れてくる。
私はそれを、大袈裟に振り払った。
「触らんとって! 言いなりになんかならへん! 騙されへんで。そうやって気遣うふりして、いつでもお払い箱にできるように、欠点探ししてるんやろ! 思い通りになんて、ならへんから!」
違う、そんな事言いたいんじゃない。
そんな言葉で三月くんを驚かせたいんじゃない。
違う、違う、違う!
これは私の本心じゃない。
「逃げられへんのや。私は、どこにも行かれへん。私は、誰の指図も受けへん。まだ許してへん。まだ終わられへん」
「おい! しっかりしろよ! 一華っ!」
強く強く、両肩を押さえられて揺さぶられた。
視界が明滅する。
くらりとめまいがして。
立って、いられない。
「三月くん、ごめん、ね」
声は届いただろうか。
分からない。
私は、急に意識が遠くなってしまったから。
本当、私は嫌な人間だ。